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僕がいまどんな気分か、君にわかるだろうか?
想像してみてほしい。君はご飯を食べ終えて、お皿を片付けている(良い子だ)。君は皿を洗うだけじゃなくて、ちゃんと最後まで仕事を完遂するために、水切り籠からまるい大きな陶器の皿を取り上げて、布巾で拭こうとする(すごく良い子だ)。しかし君は手を滑らせて、お皿をキッチンの床に落としてしまう(ああ!)。
………これからは、ワレモノを扱うときはもっと気をつけよう。床に落下して粉々になったお皿は何も言わないが、痛くて声が出ないだけなのかもしれない。そう、たとえば今の僕みたいに。
まぶたの裏で星が踊る。しばらく待ったが、星は一向消える気配がない。
目を開けて、星の正体がわかった。
木漏れ日だ。
僕は、見も知らぬ森の木陰に、仰向けに寝て―――というか、倒れて、いるのだった。
背中の下には、ふかふかした苔が一面に生えていて、上等のじゅうたんみたいだ。
そのおかげで、僕はこうして生きているのだろう。あんな高さから落ちて無事でいられたのだから、ずいぶんクッション性が………
…………あれ?
と思って、僕はあたりを見回した。
頭上はおろか、360°どちらを見ても、僕が落ちられるような穴だとか、崖だとか、そんなものはどこにもないのだ。
僕の視界に入ったのは、ずっと向こうまで続く木々と、苔むした地面。そして、雲ひとつない青い空。加えて、白いパラソル。
―――いや、白いパラソルを差した、モグラだった。
成犬のゴールデンレトリーバーくらいもあろうか、常識はずれの大きさのモグラが、パラソルを差して立っている。よく公園で子連れのママさんがしているような、紫外線除けの長袖の手袋と、白い上っ張り。御丁寧に、大きなサングラスまでかけている。そして、極めつけに、大きな白いパラソル。
モグラはサングラスの奥から、僕をうかがうようにして、少し遠巻きに見ている。
僕は、痛む体を叱咤して、どうにか立ち上がり――――
モグラ夫人(?)に背を向けて歩きだした。
「あっ、ちょっと!」
モグラが慌てたように声を掛けてくるが、僕は無視して歩き続ける。
あんな、明らかに近代科学を無視したシロモノと関わりになってたまるか!
僕が断固とした決意で足早に歩いていくと、モグラ夫人は短い脚で追いかけるそぶりを多少見せたが、しばらくして気配が消えた。
どうやら、あきらめてくれたらしい。
ほっとして、僕が歩調を緩めると、
ぼこっ!
と音がして、足元の土くれが跳ね上がった。
「少しは人の話も聞くものですわよ」
と、地面から顔を出して、モグラ夫人。
………なんかこんなゲームあったよな。昔ゲーセンに。
「………人の話なら聞きますが」
「んまっ!差別的発言!!」
僕が言うとモグラ夫人は、眉毛(らしきところ)を釣り上げ、勢いよく地面の下に引っ込んだ。
次はどこから出てくるかと身構えていると、いきなり足元の地面が崩れ………
―――僕の体は、重力に従った。
まったく、今日はよく落下する日である。
(つづく)
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